研究内容

コンクリートの完全なリサイクル

コンクリートがれきは大量に発生していますが、循環可能なリサイクル手法は確立されていません。本研究室では、コンクリートのリサイクルにおいて副産物が生じず、新たな資源の採取やセメントの投入を必要としない、完全なリサイクルを達成する手法を開発しています。コンクリート以外にも石こうボードや建設混合廃棄物に混ざる土砂など、建設分野の様々な材料のリサイクル手法も開発中です。

接着材料の不要な次世代コンクリート

コンクリートの原料である砂や砂利、石灰石の不足が世界的に進行しています。またセメントの製造では多くのCO2が排出されます。本研究では、触媒反応により砂や砂利の化学結合を切断、再生することで、直接接合する方法を開発しています。通常は建設で使用できない砂漠の砂や、月の模擬土を用いても接着が可能であることを確認しており、砂漠や月面での建設にも活用が期待されます。

(左上から時計回りに珪砂、ナミブ砂漠の砂、月の模擬土、ガラスビーズ)

廃棄される野菜や果物等を用いた素材の開発

野菜や果物の収穫、加工、調理において不可食部が大量に発生します。また可食部であっても規格外等の理由で食用に供されない野菜や果物が多く存在します。これらを原料としてホットプレスすることで、建設材料としても使えるような強度を有する100%植物由来の素材を開発しています。素材は食用も可能で、調味料で味を調えることも可能です。

(左からキャベツの外皮、いよかんの皮、玉ねぎの皮)

植物性コンクリート(生分解性コンクリート)の開発

コンクリートがれきと木材を粉砕して混合し、ホットプレスすることで、新たな土木/建築材料として再生する手法を開発しました。木材中のリグニンを接着剤としてコンクリートがれきが接着された材料となっており、生分解性も期待できます。曲げ強度は、一般的なコンクリートを大きく上回ることを確認しています。またリグニンは多くの植物に含まれることから、木材以外にも様々な植物が使用可能です。また本技術を応用すると、どこにでもある砂や砂利と、そこらに生えている草を用いて建設材料を製造することも可能です。今後は長期的な耐久性の評価とスケールアップを行うことで、様々な土木/建築材料の製造に応用する予定です。

プラスチックコンクリートの開発

コンクリートがれきとプラスチックゴミを粉砕して混合し、ホットプレスすることで、新たな土木/建築材料として再生する手法を開発しました。プラスチックごみのマテリアルリサイクルにおいては、プラスチックの種類が多岐にわたるため、分別が課題となっています。本技術では、プラスチックごみに熱可塑性のPE等が一定量含まれていれば、細かい分別をせずに再生できることが可能です。コンクリートとプラスチックの混合割合によっては、製品の吸水率をほぼ0にすることができます。耐候性も通常のプラスチックと比較して高いことが期待されており、今後は長期的な耐久性の評価を進める予定です。

超微破壊でのコンクリート構造物検査

一般にコンクリート構造物の検査では直径10cmのコアサンプルが採取されますが、構造物への損傷が大きく手間もかかり、採取の際に鉄筋を損傷することも少なくありません。微破壊試験や非破壊試験による検査も提案されていますが、前者では直径数cmの損傷が避けられず、後者では精度が十分でないといった課題があります。本研究では、直径1mm以下の削孔によりコンクリートの強度や耐久性を評価するための検討を進めています。

気体や液状水のコンクリートへの侵入挙動の評価

コンクリート構造物は気体や水分、イオンの侵入により劣化していきます。本研究室では水銀圧入法により分析したコンクリートの空隙構造情報に基づいて、コンクリートに侵入する気体や液体の挙動を評価する手法を検討しています。本研究の成果はコンクリートの設計手法などが示された示方書などに還元されています。実コンクリート構造物で得られる非破壊試験データの適切な解釈にも役立てています。

コンクリート構造物の劣化機構の解明

コンクリートの劣化機構には不明な点が多く残っています。ミクロスケールで生じる現象を観察することで、劣化機構の理解を飛躍的に深めることを目的として、マイクロ/ナノテクノロジーを活用して作製した模型流路を用いた検討を進めています。

水銀を使用しない空隙構造の評価手法の開発

コンクリートの空隙構造の分析は、コンクリートの品質や耐久性の評価にために重要です。コンクリートの空隙は一般的に、水銀圧入法という手法で分析されます。しかし、近年は水銀に対する規制が高まっていることから、水銀を使用せずにコンクリートの空隙構造を分析する手法が求められています。本研究室では、ナノ粒子を用いてコンクリートの空隙径を測定する方法を開発しています。

特殊装置によるコンクリートの観察・分析

FIB-SEM(集束イオンビーム・走査型電子顕微鏡)による最小10nmの三次元空隙構造の観察や、SPM(走査型プローブ顕微鏡)による表面物性の評価、MRI(磁気共鳴画像)による水分浸入位置の観察など、コンクリートの理解のために様々な特殊装置を用いて検討を進めています。

コンクリート構造物の試験・評価手法の開発

コンクリート構造物の力学的性能や耐久性を評価する試験手法は多く提案されていますが、破壊を伴う試験であったり、測定の機構や測定項目、価格、可搬性などの点で、改良の余地が多くあります。本研究室では、コンクリートの様々な力学的性能や耐久性を評価するための試験手法・評価手法の開発を進めています。

飛翔体の高速衝突に関する研究

爆発事故やテロなどが生じると、物体がコンクリートに高速で衝突する可能性があります。これまではひび割れ進展などのマクロな損傷については様々な検討が行われてきましたが、セメント硬化体にミクロにどのような変化が生じるのかは不明でした。本研究ではこの点を明らかにするため、ガス銃を用いて高速でセメント硬化体に飛翔体を衝突させ、衝突部付近の分析を行っています。衝撃工学分野の分野の研究室のご協力を得て検討を進めています。

被膜養生剤の作用機構に関する研究

コンクリートの水和を十分に進行させるため、被膜養生剤により水分逸散の抑制がおこなわれていますが、条件によっては養生剤の効果が発揮されないことがあります。養生剤の作用機構については不明な点が多く残っているため、これを解明することで養生剤の効果を最大限に引き出そうとしています。有機化学分野の研究室のご協力を得て検討を進めています。

コンクリートの変形メカニズム

セメントペーストは通常、非常に脆性的ですが、拘束圧下ではマクロな損傷を生じることなく大変形することが確認されました。このような塑性流動のメカニズムは、現在の知見では説明できません。本研究室では流動メカニズムの解明と、コンクリートの変形性能の制御を目指しています。地球科学分野の研究室のご協力を得て検討を進めています。

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